2025/09/10
ミニカーとダイカスト
愛しきオーバーフロー
『オーバーフロー』、ダイカスト製法をご存じない方々には聞きなれない言葉ですね。ダイカストは簡単に言えばプラモデルと同じようにランナー(作る時に切り取る、いらない部分)があり、さらにその部品の品質を向上させる為に、オーバーフローが存在します。酸化物やガスを溜め込んだり、金型内の熱管理をしたりする重要な役割を担っています。しかし、製品にする前に除去してしまいますので、普段皆さんは見る機会の無い、いわば縁の下の力持ち的な存在です。
例えばこんな感じ。
右からランナー・製品部分・オーバーフローです。真ん中だけ必要な部分となります。
さて、9月6日は月に一度のアメリカ・マテル社のミニカー、ホットウィールの発売日でした。最近の私は膨大なコレクションの置き場に困り、率先して朝から並んで物色する事も無くなりました(笑)。ですので、ゆっくりお昼くらいに【落穂拾い】に出かけます。
当日発売品が並ぶテーブルの上は、開店から2時間ほど経過した後に行くと、もはや閑散としていて『兵どもが夢の跡』状態、非常に荒れ果てています(笑)。残り物のミニカーを何台か手に取り、ふと何故か1台だけ売れ残った『FORD GT』が目に止まりました。
FORD GTはかつてルマンを1966年~69年まで4連覇した名車、FORD GT40を現代版として2005年に復活させたモデルです。外観は60年代のGT40をモチーフにしており排気量6200ccのV8ターボチャージャーから558馬力を絞り出しているスーパースポーツでした。(パッとしない方は映画『フォードvsフェラーリ』または『栄光のルマン』を観てみましょう。)
さて、そのFORD GTのホットウィール、普段の私の趣向とは違うので、興味が無いのですが、何となく手に持ってみてびっくりです。 何とそのミニカーにはオーバーフローが付いているではありませんか!!しかも脱落もせずにさも『私は製品の一部』と、塗装までされて誇らしげに堂々と主張しています。ダイカスト鋳造から余分な部分を削除するトリミング工程、そしてバリ取りなどの仕上工程を経て、塗装から印刷、最終工程で組立、そして検査を経由して最終のパッケージまで、全ての検査をかいくぐり(笑)、海を渡り群馬の田舎までたどり着いたオーバーフローに、私は感動すら覚えます。
愛しきオーバーフローよ。
右が今回の主人公、左は正常品(比較の為に通販で緊急購入しました)
下からよーく見ると・・
オーバーフローが付きっぱなしです。
観察するとマテル社はオーバーフローまでしっかりデザインされていて勉強になります。